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福岡簡易裁判所 昭和63年(ハ)6591号 判決 1989年5月25日

主文

一  被告は原告に対し、金一〇万六、四八〇円及びこれに対する昭和六三年一二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金二五万七、二一〇円及びこれに対する昭和六三年一二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求原因の要旨

1  原告は、次の交通事故により、物件損害をうけた。

イ  事故発生日時

昭和六三年一〇月一〇日午後八時二〇分ころ

ロ  発生場所

福岡市東区香椎浜四丁目一〇番一号ふくみつ病院駐車場内

ハ  加害者の種類

普通城陽自動車(福岡五七み七四九七)

ニ  右運転者の氏名 被告

ホ  事故の態様と結果

原告は、自家用軽自動車(以下「原告車」という)を運転し事故発生場所で駐車中、加害者が前方の注視義務を怠つたため側面より原告車に衝突し、原告車を破損した。

2  右事故によつて原告は、左の損害を蒙つた。

(一)車両修理代 二三万五、六一〇円

(二)  バス通院代 二万一、六〇〇円

原告は慢性腎不全治療のため原告車により週三回福岡市東区香椎浜所在の病院に通院中であつたが、右車両が使用できなくなつたため昭和六三年一〇月一〇日より同年一一月二五日までの間バスにより通院したバス代

合計金 二五万七、二一〇円

3  本件事故の原因は、被告の過失に基づくものであるから、被告は原告に対し、本件損害を賠償する義務がある。

4  そこで、原告は被告に対し、次の金員の支払いを求める。

(1)  損害金 二五万七、二一〇円

(2)  右金員に対する訴状送達の翌日である昭和六三年一二月一日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金

三  理由

1  二の1のイないしホ、3については当事者間に争いがない。

2  原告車破損による損害

成立に争いのない甲第二号証によれば、原告車は本件事故によつてリヤーバンバー、パネル等を破損しその修理代見積額が二三万五、六一〇円であることが認められるが、破損車両の修理費が当該車両の破損前の時価をこえる場合は特段の事情のないかぎり賠償を求め得る額は車両の時価を限度とすると解するのが相当であるところ、証人津田正裕の証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証の1ないし6及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、本件車両はダイハツフエローL三八型五〇年式の軽自動車で、同型の事故当時の時価は一〇万円程度と認められるから、原告は原告車の破損により原告車の時価に相当する一〇万円の損害を蒙つたものと認められる。

3  バス通院代

原告本人尋問の結果によれば、本件事故の態様並びに破損の部位程度よりみて、示談交渉もしくは賠償請求訴訟のため本件事故車を現状のまゝ保存しておかなければならぬ必然性は認められず、これによりその間に生じた費用を本件事故と相当因果関係ある損害とは認め難い。

もつとも、前記破損部分の修理には通常一〇日ないし二週間位が必要であると認められ、その間原告はバスを利用し一回当り、一、〇八〇円程度の支出を要したのであるから、前記修理必要期間二週間、週当り三回通院、一回当り一、〇八〇円の割による計六、四八〇円はなおこれを本件事故による損害と認めるのが相当である。

4  以上によれば原告の本訴請求は被告に対し原告が一〇万六、四八〇円及びこれに対する本件訴状の送達の日の翌日である昭和六三年一二月一日から支払済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 林正三)

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